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福岡の大学で学ぶインドネシア人留学生が自身のブログで「日本人のインドネシア観」ついて極めて率直に意見を述べています。インドネシアで日本の知名度は高いですが、日本人はインドネシアのことを知っているのでしょうか?

彼らの目に映るインドネシア

インドネシア人が日本で暮らすということは簡単なようでなかなかに難しい。暮らしやすい面はといえば、文化的にみればインドネシアと日本はそれほど変わらないし、日常的な慣習なども似ている部分が多い。例えば、人とすれ違う際に微笑む、目上の人の前を通る際に頭を下げる、人と体がぶつかったりした場合は謝る、教師の前では礼儀正しく丁寧に話す、ソーシャルメディア上ではまだ他人の気持ちに配慮しているといった点などだ。

だが、よその国で暮らし、様々な性格の人と付き合う中で時には憤懣やるかたない思いに駆られることもある。以下にインドネシア人として腹に据えかねたささやかな例を挙げてみたい。

1.インドネシア?それってどんな食べ物なの?

魔法や手品の話ではなく、私が出会った日本人の中にはインドネシアという国の存在すら知らなかった人が何人かいた。彼らの地理の成績が悪かったせいなのか、インドネシアが他の東南アジア諸国と比べてまだ人気がないせいなのかは分からない。だが、彼らは本当にインドネシアの事を知らなかったのだ。

中にはインドネシアとインドを混同している人もいた。なぜか?日本語では「インディア(※注)」のことを、インドネシアと似た名前の「インド」と呼んでいるからだ。

※注:インドネシア語ではインドは「インディア(India)」となる。「インド(Indo)」は「インドネシア」の省略語としてネット上などで日常的に使われる。

そして、最も悲しみを覚えたのが毎年行われる大学祭での事。看板に描かれた世界地図からインドネシア共和国が島ごと消えていたからだ。

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※インドネシアが消滅した看板

マレー半島とオーストラリアの間にはインドネシアの代わりに真っ青な海が広がっていた。同様に本来は紅白旗であるはずの国旗が逆さまの白紅旗になっていた。これはポーランドの国旗を意識したものであるかは定かではないが、製作者が我が最愛の祖国に対して何の関心も持っていない事は明らかだろう。だが、「同類相憐れむ」とでも言えばいいのだろうか。世界から消滅したインドネシアと同様に、マレーシア、ブルネイ、パプアニューギアニアも姿を消していた。そう、少なくとも私たちはひとりぼっちなんかじゃない;p

2.インドネシア?どこから独立したの?

ウワッと、私はここで古傷を思い出させたり、ましてや分裂を招くという意図は全くない。過ぎ去ったことはそのままに、それは私たち皆にとっての貴重な教訓となると思っている。だが、時にはやり場のないやりきれない気持ちに駆られることだってある。ある時ひとりの先生が無邪気に尋ねてきた。「インドネシアは昔、どこの国から独立したんだい?」「ああそれは...日本です」「おおそうか...」「カーカー」(カラスが通り過ぎる)

またしても、だ。先生が歴史の勉強が嫌いだったり、健忘症を患っていたのかは定かではない。だが、これは日本滞在中に「カーカー」とカラスが通り過ぎた瞬間のひとつであり、こういった瞬間が訪れたのは1度や2度ではない。この大学の先生、学生、国際センターのスタッフから外国人スタッフに至るまで、すでに何度も経験した事だ。

こうした「憤懣やるかたない思い」がきっかけとなり、私はひとりのベトナム人留学生と真剣な話し合いを持つに至った。ベトナムも過去10年にわたる苦い経験をしており、同様の質問を数多く受けてきたという。そして、私たちはこう結論付けた。私たちの国と同様、厚く積み上げられた彼らの歴史の記録において「3年半」や「10年」に何の意味があるのだろうか、と。

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宗像大社のポールに書かれた「世界人類が平和でありますように」という言葉のように。

3.インドネシア?まだ森でオランウータンと遊んでるんでしょ?巨大なクモを飼ってるってホント?

これは世界でもっともガッカリさせてくれる質問のひとつだろう。何人かの人間、特に豊かな大陸(仮にヨーロッパとしておこう)から来た人たちはインドネシア人が今も森で木にぶら下がっていたり、毒クモをペットとして飼っていると考えている。私の調べでは、こうした強く是正が求められる誤解が生じる背景にはいくつかの要因がある。

まず第一に、インドネシアに関係したプロモーションビデオの数々だ。撮影地は決まってうっそうと生い茂ったも深い森や大きな川であり、そこにはその土地で暮らす民族たちが写っている。これは非常にエキゾチックなものであり、私自身この熱帯の国に誇りを持っている。だが、別の側面から見れば、こうしたビデオが誤ったメッセージを伝えている可能性も否定できない。結果として、私たちがまだ木の上に立てられた木製の家に住んでいると誤解する人たちもいることだろう。

第2に、私たちインドネシア人自身が時に誤ったメッセージを伝えている。例えば日本語の授業などで、自宅を説明するように言われた時、私たちの描写は「森」からそれ程かけ離れたものではないからだ。カリマンタン(ボルネオ島)出身の友達は、小学校の頃は森でよく遊んでいたし、木にぶら下がっているオランウータンも見たことがあると話していた。(東ジャワ州)マグタン出身の友人も自宅に木々に囲まれ、大きな農園があったと話していた。これはこちらの人間にとってはあまり日常的な光景ではない。私自身、庭にはマンゴーの木があったし、小さい頃はバナナの葉っぱで遊んだことがあると話したことがある。

だが、ひとつ奇妙なこともあった。大学の国際センターのあるスタッフは実際に旅行する前は、インドネシアというのは砂漠だらけで女性は好き勝手に外出してはいけない国だと思っていたそうだ。どうしてか分かるだろうか?「アジア最大のイスラム教徒を抱える国」という呼ばれ方から、インドネシアをサウジアラビアのような国だと考えていたからだ。幸運なことに、そのスタッフはインドネシアから帰国後、「完全に間違っていた。インドネシアは他の東南アジア諸国と変わらないようだ。至る所で女性を目にしたよ」と話してくれた。「そう、そうなんですよ!」と私は答えた。本心では「インドネシアは単なる東南アジアの1カ国ではありませんよ。いつか世界に羽ばたいてみせます」と言いたかったのだが、あわてて言葉を飲み込んだ。「その『いつか』っていつなの?」と聞かれるのが怖かったからだ(笑)。

4.インドネシア?どんな文化なの?

この質問も授業のディスカッションでよく取り上げられる。福岡での生活が長くなるにつれて、自分の祖国の事を何にも理解していないんだなという思いが私の中でますます強くなってきた。これまでに私と友人たちが配ったインドネシアに関する資料ではジャワやバリの文化が大きく取り上げれている。だが実際には、インドネシアはそれら2つの島から成り立っている訳ではない。結局、私たちは毎回のようにこう付け加えていた。「インドネシアは千の異なる民族と文化を持つ大きな国で、それぞれの民族や文化が合わさっています」と。

こうすれば私たちを責める人もいないと思う。当然これが事実として正しい事なのだから。だが、私たちインドネシアの留学生も心の奥底では、自国の文化について質問された時に他の国々のように自信を持ってはっきりとした答えを言いたいなと思う時もある。例えば、日本の着物、タイの「Sawadee Ka」、ベトナムなら独特の新年のお祝い、スウェーデンのシンプルな「hi」などのように(※注:意味がよく分かりませんでした)。

外国への交換留学の他に、インドネシア国内の州レベルでの交換留学の必要性も強く感じている。もちろん目的は私のような人たちがさらに多くの国内の文化を学び、知ることにある。もし機会があれば、半年ほどメラウケ、バタック、ヌサトゥンガラ、ポンティアナックなどのインドネシアの地方で過ごしてみたいと思っている。

5.インドネシア?テロリストと詐欺師?

上で挙げた4つの点についてはやるせない思いを感じるがゆえに訂正される必要があるが、この5点目に関してはより真剣に考えるに相応しいテーマだと思う。私はある時、バリ島へすでに3回ほど行ったことのある日本人と会う機会を得た。彼女がバリ島へ最後に訪問したのは8年以上前、つまり2002年のバリ島テロ事件前の事だ。

楽しく食事をしていると、彼女がこう質問した。「バリは今安全なの?」。非常にシンプルかつ全く持って返答に困る質問だった。単純にハイと言って、首を上下に動かすだけでは済まない。これは安心と責任を伝え、インドネシアの名声を守る機会でもあったからだ。

正直に言えば、私は心の中では「それは運命です。人の生死は神の手の中にあります」と思っていたが、この答えではインドネシアの名前にますます傷がついてしまう。最終的に私はこう答えた。「もちろん何の心配もいりません。バリは安全ですし、私たちの政府もセキュリティシステムを強化しています」

彼女はまだ信用しきれないようで、「でも、聞いた話では、9・11以後にテロリストがインドネシアとマレーシアに入って来たみたいだけど…」ととどめの質問を繰り出した。

私はしばし黙り込むと、こうした特定の層をスケープゴートに仕立てようとする層のホラ話(←めちゃくちゃ曖昧な文章だね)を彼女が真に受けないように、適切な答えを探そうと頭をフル回転させた。そして、私は自分にできる精一杯の返答をした(このブログを読んでいる人にトマトをぶつけられるか、補足の意見が付けられるかは分からないけど)。「それは単なるうわさ話です。今日なにが起こっているかなど誰にもわかりません。インドネシアやマレーシアに限った話ではないと思いますが、私たちは安全性について配慮しています。私も現在のインドネシアは安全であると考えています. ぜひいらして下さい」。これが彼女が求めるものからはかなり外れた答えであることは分かっていたが、あの状況において、私は自国を擁護するためにベストの選択をしたと思っている:p 

残念なことに、バリに恋したと語る彼女はそこで経験した不愉快な出来事についても話してくれた。「あそこの人たちはお金に関していつもズルをするの。円からルピアに両替すると彼らは私が本来受け取るべき金額よりも少ない額しか渡してくれないんだ。でも、ルピアの計算は私にはすごく難しいことだし」。私は「どこで両替したんですか?」と聞き返した。「空港の銀行の中よ」と彼女は答えた。

私は息をのみ考え込んだ。複雑な感情が入り混じっていた。恥ずかしさと同時に自分が罪を犯したかのように感じられた。彼女は席を確保するために財布をテーブルに置いてその場を離れられる国から、世界の楽園(と巷では言われている)に休暇で訪れた。私が彼女の立場であれば、間違いなく大きな失望を感じたことだろう。問題はお金の額だけではなく、得られた現実がその期待とそぐわないことにあるからだ。

私は結局、「ウアァ、酷いですね。ひとりのインドネシア人として、バリ人として、 本当に申し訳なく思っています」と答えただけだった。おそらくそんな私を見て同情したのだろう。「いやいやそうじゃないの。銀行以外の人たちは本当にフレンドリーでいい人たちだったから。私は今もバリが大好きだし、いつかあそこで働きたいと思っているの」と彼女は付け加えた。私は嬉しかった

私がなぜこの文章を書いたのか?今あるツールを使いこなすという以外に、「インドネシア」と聞いた時に彼らは何を思い浮かべるのか、その経験をみんなにシェアしたかったからだ。

日本で学ぶことで、「インドネシア大使」という仕事は政府から任命された人々だけではなく、他の国々の市民と日常的に交流している私達ひとりひとりが担うべき役割でもあるという事に気が付いた。私はミスユニバースのインタビューでインドネシアを「カントリー」ではなく「シティー」と呼んだナディン・チャンドラウィナタや、パンチャシラを覚えていない第二のナディンをもう責めようとは思わない。国際的なレベルで自国を代表するのは本当に大変な事なのだから!

日本で学んだもうひとつの教訓がある。他の東南アジア諸国と比べると、インドネシアは人気という面ではタイやマレーシアに劣っているということだ。タイに行ったことがある、あるいは行ってみたいという日本人は多いが、私たちの国は時に名前すら正しく呼ばれない事もある。そして、悲しいことに福岡市の図書館ではマレーシアは専用の棚がある一方で、インドネシアのそれは存在しない。これは「博多どんたく」という大きな祭りでも同様だ。マレーシアには専用のパレードがあるが、私たちインドネシアに割り当てられたのは、私の記憶が正しければ、「バリ」および福岡インドネシア人留学生」のパレードであり、その出演に関して特別なことは何もなかった。

もしかすると話しすぎてしまったかもしれないけど、皆さんのこれからの活躍を祈っています:)

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ところで、先日の大学祭(かすみ祭)で私がひとつ嬉しく思った事がある。日本の学生グループが音頭をとって、インドネシアの「ティムス(スイートポテト)」を売り出してくれたからだ。屋台は「チャンティック(Cantik: インドネシア語で「綺麗/美しい」)」と名付けられていた。私たちももっと一生懸命インドネシアをアピールしよう!


【管理人コメント】
みなさんはこのインドネシア人留学生のブログ記事をどう読みましたか。実はこれ、インドネシアの某ネット掲示板でものすごい反響を呼んだ記事なんです。今回のエントリーはその反響を紹介するのための下ごしらえみたいなものです。詳細については私情を交えて(笑)、また稿を改めてお伝えする予定ですのでご期待ください。もちろん、この記事に対するみなさんからのコメントもお待ちしています。

【2013年1月12日追記】
先ほど確認したところ、僕がこのブログ記事を知ったスレッドが運営側から削除されていました(笑)。確かに僕の目から見てもインドネシアの自称「愛国者」が立てたスレッドにしか見えなかったので、削除という方針自体に異論はありません(注:そのスレ立てした自称「愛国者」と今回紹介したブログ記事の筆者は全くの無関係です)。ただ反響が非常に大きかっただけにそれを紹介できなかったという事が、アヤシゲな翻訳ブログの管理人としては残念でなりません。最後に確認した時は閲覧数が20万回、コメントは3千以上ついていました。

※削除されたスレはもう読めませんが、スレのトップページだけはキャプチャしてありますので、興味がある方はツイッターを通じてご連絡いただければお渡しします。