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先日のキャロライン・ケネディ駐日米国大使のツイートによって再燃した「イルカ追込み漁」論争。インドネシアではこの件に対してどのような意見があるのでしょうか。和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた映画「ザ・コーブ」に対する反応をインドネシアのネット掲示板からご紹介します。非常に長い記事ですが、できれば末尾の【管理人コメント】も読んで頂けると嬉しいです。



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「ザ・コーブ(The COVE)」は彼の地での組織的なイルカの虐殺を描いた映画である。日本はイルカだけではなく、可愛らしくも魅力的な海洋哺乳類である鯨の虐殺も行なっている。聞くところによれば、これらの行為は日本の人々にとっての慣習であるという。この件が公になり詳細が知られるようになったが、日本人の多くがその虐殺行為の存在をしらず、そればかりか彼の地でイルカ肉が自由に販売されていることも認識していなかった。

(ザ・コーブに主演した)リック・オバリーと彼のチームについても記しておこう。彼はイルカをショーのために訓練してきた調教師であるが、10年間にわたって可愛らしく賢い海洋哺乳類を巨大なエンターテインメント産業の中に押し込めてきた自らの行為が、彼らの存在を破滅に導く手助けをしている事に気が付く。きっかけは1960年代のテレビシリーズ、『Flipper (邦題: わんぱくフリッパー)』に出演した5匹のイルカを調教していたが、そのうちの1頭であるキャシーが死んでしまったことにある。自身が関わってきたイルカに関するエンターテインメント産業が非常にネガディブな影響を持っていることを理解した。それ以降、彼は現在に至るまで35年にわたって(イルカを救うための)懸命な努力を続けている。

ケージに閉じ込められ、ショーの人気者となっているイルカは非常に高いストレスを抱えており、容易に死に至る。水族館などで可愛らしいイルカのショーを見て私たちは歓声を上げるが、これはイルカが感じているものとは全く異なっている。なんとも愛くるしい微笑みの裏にイルカたちは大きな抑圧を感じているのだ。

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太地-日本
「太地は毎年行われるイルカ漁で世界的な注目を集めた日本の漁師町のひとつである。太地町では毎年4月および9月に2万5千頭(※)のイルカが犠牲となっている。イルカの殺害は調教師や獣医を含む日本のイルカショー関係者にたびたび目撃されている(時には手伝われている)。イルカ1頭につきおよそ1万5千ドルの値がつけられる。太地町では殺されたイルカたちのおぞましい光景が広がり、少なくとも100頭のイルカと、50頭のゴンドウイルカが9月上旬に始まる第1の猟期で虐殺されている」(別のスレッドから引用)。太地町のイルカ及びクジラ漁は国際的な非難を浴びながらも現在でも続けられている。太地町ではイルカ肉が人気のメニューとなっており、結果としてイルカの虐殺はごく当たり前の行為として認識されている。そればかりか、現地の自治体がお墨付きを与え、イルカ肉のメニューが学校給食に採用されたこともある。

※「2万5千頭」という数字は日本全体のイルカ「捕獲枠」。2011年の水産庁の調査によれば、イルカの「捕獲頭数」は日本全体でおよそ1万2千頭(参考)。

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ショーで「微笑む」イルカを見て、これでもまだ君は微笑むことができるのだろうか?
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インドネシア人の反応
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  • なぜあんな野蛮な方法で動物を殺して平気なのだろうか。
     
  • 日本はヒドイ。イルカと鯨は守るべき動物だというのに。
     
  • 本当に悲しいことだね。イルカは世界中で可愛がられ、賞賛されてると思っていたんだけどな。何で彼らは平気なんだろう?
     
  • 日本人には心がないのか。あんな可愛らしいイルカを平気で食べられるなんて信じられない。
     
  • 日本はデンマークの後を追いかけるのか?イルカは可愛いじゃないか。殺すのはやめてくれ。
     
  • 見ていてムカムカしてきた。あんなに可愛いイルカと鯨が虐殺されてるって?
     
  • 海面が真っ赤に染まるなんて。イルカたちは本当にかわいそう。
     
  • 海の色が変わる程とは... なぜここまで野蛮になれるのだろうか。イルカは人間の親友だというのに(少なくとも、人に危害を加えたりはしない) 。
     
  • 見ていて悲しい。サメやイルカを絶滅させないでくれよ。
     
  • 俺の親は漁に出た時にイルカに命を救われたことがあるそうだ。イルカは家畜ではない。生活における需要と継続の間には時に常に深刻なジレンマが生じる。
     
  • そもそもイルカ肉の需要ってどのくらいあるんだ?
     
  • 日本は世界最大の海産物消費国だが、イルカまでとる必要はないだろう。そんなことをしてたら絶滅してしまう。ほとんど絶滅しかかっているマグロのように。
     
  • 俺も(映画を)観たよ。本当に残酷だったし、それは現在でも続いてる。
     
  • イルカは人間の親友だっていうのに... 
     
  • 動物がかわいそう。こんなことを続けていたら、イルカたちがいなくなってしまう。
  • 前にテレビでも見たことがあるけど、インドネシアでも鯨やイルカ漁の伝統がある。ただ、規模は小さく、散発的に行われるだけだ。日本、イギリス、タイ、アメリカなどの海洋先進国とは全く違う。彼らはそれ専用の巨大な船や小型船を使って漁を行なっているのだから。
     
  • インドネシアでもラマレラ地域でクジラの虐殺があるが、日本の虐殺ほどの数ではないし、長い槍という非常の伝統的な方法で行なっている。イルカや鯨の虐殺は実は世界中で行われているし、その地域の慣習であるというのがその理由だが、伝統を守るというなら、最先端の器具を使ったり、大量に捕獲するといった文化はなかったはずだ。
     
  • (↑上のコメントの続き)もし先祖から受け継いだ伝統であるという理由で漁を行なうなら、俺たちはいつになったら進歩できるんだ? 過去から受け継いだ文化や習慣の全てが良いものとは限らない。おそらくその昔においては、鯨というのは邪魔な生物であり、怪物とみなされることもあっただろう。だが、現代に生きる俺たちは鯨の素晴らしさを知っているし、鯨たちも邪魔されることがなければ、怒ったりはしない。だから、俺たちはそうした馬鹿げだ行為を止めるためにももっと頭を使ってこれからも環境を守っていかなければいけない。

以下はこのスレッドに見られた数少ない"冷静な"コメント。
  • 俺もその映画を観た。確かに非常に残酷な内容だったが、それは一部の地域だけの話だ。日本人全員がイルカを殺している訳ではない。それどころか、映画が公開されて初めてイルカ漁の事を知った日本人だってたくさんいる。 
     
  • 良いスレッドだと思う。だが、イルカだけではなく、ニワトリ、魚、鳥、蚊、牛などの全ての動物が苦しんでいる事にも目を向けてほしい。イルカの虐殺に悲しみを覚えるのなら、なぜKFCでチキンをほうばる時に何も感じないのだろうか?もしくは、電気ラケットで蚊を打ち殺す時は?
     
  • (スレに溢れる罵倒に対してのコメント)全ての人間には良い面と悪い面がある。牛を食べる人間は多いが、牛を尊重している人間はその行為に対して「牛を守れ」と怒りの声をあげなければならないのだろうか。笑ってしまうね。俺たちは人間なんだ。まずは彼らの意見を尊重しよう。彼らに間違いがあれば、(罵倒ではなく)建設的な意見を言えばいい。もしその意見が受け入れられなければ、神が彼らに気が付かせてくれるはずだ。言葉遣いには気をつけよう。不必要な言葉を連ねるよりも、皆で共に祈りを捧げようじゃないか。

【管理人コメント】
このスレには2千近くのコメントが付いていましたが、その99パーセントはイルカ漁(と時には捕鯨)に対する否定的意見で、非常に感情的な罵倒コメントも数多くみられました。特に、海面がイルカの血で真っ赤に染まる写真は衝撃的であったようで、その点に言及するコメントも多かったです。その他の意見としては、「日本人の意見が聞いてみたい」(3件)、「デンマークの方がもっとヒドイ」(2件)というコメントもありました。

無用な対立を煽ることが目的ではないので、今回の記事では感情的な罵倒コメントはすべて排除しています。ただ、ことの是非は抜きにして「イルカ漁(もしくは捕鯨)」というトピックに対して否定的な(かつあまりにも感情的な)見解を述べるインドネシア人ネットユーザーが非常に多かったという事は客観的な「事実」として記しておきます。同様のスレは他にもいくつかありましたが、コメント欄の傾向はほぼ同じでした。

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感情的なコメントに対して冷静になって下さいと呼びかけるのは野暮な事なのかもしれません。しかしながら、感情的なコメントに感情的なコメントで応戦したところで、問題は何も解決しません。「ザ・コーブ」という映画を見て感化されたインドネシア人が(少なくとも今回紹介したスレッドには)多いという「事実」は「事実」として受け入れる。その上で、それにどう対処するかを真剣に考えるのが理にかなったやり方だろうと個人的にはそう考えています。

(賛成・反対以外にも、「別にどうでもいい」「インドネシアに何を言われても気にならない」といった意見もそれはそれでありだと思います)。
 
僕も時間が取れれば、日本の捕鯨やイルカ漁については日本側の意見をインドネシアのネット掲示板で紹介してみたいと思っています。「日本側の意見」にはイルカ漁反対の声も当然含みますが、それ以上にインドネシアではほとんど紹介されることのない賛成派の意見についても紹介してみたいです。感情的な相手を論理で説得することは非常に難しいですが、「確かに相手の言い分にも一理ある」と思わせることは可能なはずです。

皆さんからの建設的なコメントをお待ちしています。

デンマークの鯨漁は認められ日本のイルカ漁が糾弾される理由  桜井よしこ

情報発信に関する消極性が日本を不当に追い込むもう一つの顕著な事例にイルカ・鯨漁がある。この件での「日本対世界」の対立の奇妙さを分析したのが吉岡逸夫氏の『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』(講談社新書)である。氏の指摘は、情報力を磨かない限り、日本は原発事故でもイルカ漁でも不当な敗北を喫し続けることを示している。

和歌山県太地町で行われている伝統のイルカ漁が「ザ・コーヴ」(入り江)として米国で映画化され2010年のアカデミー賞を受賞したことは当欄でも取り上げた。

 同映画にはイルカの血で赤く染まった湾が日本人の「野蛮さ」と「残虐さ」を示す場面として繰り返し出てくる。世界で日本人だけが「こんな殺し方をする」という強いメッセージを、映像は発している。

ところが、デンマークのフェロー諸島でも同じように多数の鯨を浅瀬に追い込み、海を赤く染めて殺して食料にしているところがあった。そのことを吉岡氏が詳しく報じたのだ。

衝撃的なのは右の書に掲載された写真である。「ザ・コーヴ」が伝えた太地町のイルカ漁の映像とまったく同じでありながら、伝わってくるメッセージは天地ほども異なる。数十頭の鯨が後頭部から円を描くように深く切り込まれて血の海に並べられている。その海岸には、幼な児からお年寄りまで多数の人びとが集まり、豊漁を喜んでいる。鯨漁には誰でも参加でき、参加すれば鯨の肉を分配してもらえるのだそうだ。

このフェロー諸島にもシー・シェパードがやって来て漁を妨害した。そのときからフェロー諸島の人びとは伝統としての鯨漁を正当化する情報発信を始めたそうだ。今では鯨をいかに素早く殺すか、その道具や手法から、どのように食生活に取り込んでいるかまでを説明し、正当化するDVDを作製しているという。

太地町の人びとと外務省がイルカ漁について沈黙を決め込む日本とは対照的である。結果、フェロー諸島の人びともデンマーク政府も、もはやシー・シェパードにも国際世論にも糾弾されることはない。情報を正確に早く、堂々と発すること、情報力を磨くことによってしか、日本は勝ち残っていけないと思うゆえんである。(週刊ダイヤモンド)
(関連部分を抜粋)
http://blog.kajika.net/?eid=998856