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2013年8月、インドネシアで大人気コミック『ドラゴン桜』の完全リメイクが決定したとのニュースが日本のメディアを賑わせました。日本のコミックはインドネシアでもこれまでに数多く翻訳され人気を博してきましたが、人物やストーリーを現地向けにローカライズした完全リメイク(ローカリメイク)版の製作はこれが初の試みとなります。落ちこぼれの高校生が東大現役合格を目指す漫画『ドラゴン桜』がインドネシアでリメイクされた背景とは?

●インドネシア版『ドラゴン桜』


「Kelas Khusus Naga(ドラゴンの特進クラス)」
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●日本コミックに関する日イ共同事業の開始
『ドラゴン桜』がインドネシアで完全リメイクされた背景には、日本コミックに関する日本とインドネシア企業による協力があります。昨年8月、キャラクターの海外展開などを手掛ける「TGライツスタジオ」(東京)と現地最大手出版社のコンパス・グラメディアグループの出版部門「M&C」(ジャカルタ)が、日本で人気を博したコミック作品を現地の実情に合わせて完全リメイク(ローカリメイク)して出版する共同事業の開始を発表しました。『ドラゴン桜』はこの事業の第1弾として選ばれています。

●『ドラゴン桜』のリメイク
2003年から2007年にかけて講談社『週刊モーニング』誌上に連載された『ドラゴン桜』は多彩な受験テクニックが人気を博し、単行本は600万部超の売り上げを記録。2005年にはテレビドラマ化もされています。落ちこぼれの高校生たちが強烈な個性を持つ桜木健二ら教師陣に鍛えられながら1年間で東京大学合格を目指すという同作品。

リメイク版ではストーリーの大筋に大きな変化はありませんが、主人公がインドネシア人学生へ、東大が現地の有名大学へ変更されるなどインドネシアの社会背景と文化に即した設定へと変更されています。「物語の大枠は同じだが、バイク通勤・通学が多いといった社会事情や、出身地の島ごとに特徴的な性格がある、といった文化的背景を盛り込んで、アレンジしていく」とTGライツスタジオ。リメイク版の作画は現地の漫画家が担当しています。

●今後の展開-新たなコンテンツビジネスの構築
「インドネシアでも受験競争が過熱しており、読者の共感が得られやすいと判断した。受験のお守りや参考書など、商品化権の需要も見込める」と説明するTGライツスタジオ。今回の共同事業でドラマ化や映画化、プロモーションでの活用、キャラクター関連商品の販売といった展開も想定しています。

事業パートナーは、現地大手メディア企業のグラメディアグループ。インドネシア内で読まれるコミックは、8割以上が日本のコミックの翻訳版ですが、グラメディアグループがそのほぼ全てを取り扱い、傘下の書店(国内最大チェーン)を中心に販売しています。今回の作品は、その書店での単行本の販売及び電子コミック出版の両方にて同時展開し、ファンが集まるコミュニティへの積極的な告知も含め、紙とWebの相乗効果を狙います。出版後は、ドラマ化、映画化、プロモーション利用、及びキャラクター関連商品の展開を想定しています。(「TGライツスタジオ」プレスリリースより引用)

また、TGライツスタジオは今回のインドネシア版『ドラゴン桜』を皮切りに、ローカリメイクに適した日本国内のコミックを選定し、インドネシアにおいてリメイク作品を継続的にリリースしていく予定であるといいます。インドネシアで事業を確立した後は他のアジア諸国への展開を視野に入れて、事業の拡大を目指しています。

●インドネシア語版『ドラゴン桜』と原作の違い
詳細は次回のエントリーで解説しますが、今回はそのさわりとして、日本語版の「ドラゴン桜」いうタイトルの意味とインドネシア語版の違いを紹介します。

まずは日本語版から見てみましょう。「ドラゴン桜」というタイトルは物語の舞台となった龍山高校とその校庭に植えられた1本の桜からとられています。『ドラゴン桜』単行本第1巻で以下のような説明がなされています。

「この木...なに?」「これか?」
「こいつは...そうだな 龍山高校の龍の字をつけて」「"ドラゴン桜"だ......」
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「来年 春...... 東大合格を果たしてこのドラゴン桜に満開の花を咲かせようぜ」
「毎年この桜は龍山高校から続々と出る東大合格者を見送るんだ」
「そのためにもこの学校 失(な)くさせやしねえ」
「まさにこの桜は龍山高校が永遠に存在し続けるシンボルだ」
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この桜の木という非常に日本的な発想をインドネシア語版ではどのように表現したのでしょうか。インドネシア語版では原作の龍山高校はウィジャヤ・クスマ高校に変更されています(「ウィジャヤ・クスマ」は日本語で月下美人の花という意味)。そして、このウィジャヤ・クスマの花にまつわるインドネシアの民話をもとにストーリーを組み立てています。

以下に、特進クラス担当の弁護士ドニ―・ウィリアナガとヒロインのリアニ・アナンダとの会話から関連部分を紹介します。日本の漫画とは逆で、左から右に読んで下さい。

「そっちを持ってくれ」
「そんなのどうするの?」
「この植木鉢は特進クラスのシンボルだ」
「えっ、特進クラスの?」
「この学校の名前(注:ウィジャヤ・クスマ)が花の名前に由来していることを知っているかい?」
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「ウィジャヤ・クスマは勝利の花という意味を持っている。その昔、デウィ・ワソワティを龍から人の姿へ戻した感謝の印として」「クディリのマハラジャ、プラブ・アジ・プラモサはデウィ・ワソワティから花の苗を渡された」「デウィ・ワソワティは『その花はこの世界では手に入りません。この花を持つ者はジャワの地を支配する王たちを倒すことになるでしょう』と言ったそうだ」
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「それで、この鉢との関係は?」
「ウィジャヤ・クスマは年に1度だけ咲く花だ」
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「この花が咲くたびに、それはこれから毎年、特進クラスの生徒たちが獲得する勝利の証となる」
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「この鉢ではウィジャヤ・クスマの花が咲くことになる」
「そして、この特進クラスは君にウィジャヤ・クスマの花を授ける龍の化身なんだ」
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【管理人コメント】
実際にインドネシアにある民話をもとに上手にストーリーを組み立てているようですね。とりあえず今回はさわりだけですが、次回のエントリーで日本語版原作とインドネシア語リメイク版の比較をしてみようと思っています。

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