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言葉の問題は不安だけど、思い切ってツアーガイドを付けずに日本へ旅立ったインドネシア人女性。そんな彼女の日本ひとり旅の思い出を綴った「日本旅行は言葉が不安で敬遠?なんてもったいない...」という文章を見つけたのでご紹介します。

日本旅行は言葉が不安で敬遠?なんてもったいない...

母はいつも言っていました。「道に迷う事を恐れてはいけません。大事なのは、あなたが読めること、そして尋ねられることです」と。この母の教えがあったからこそ、私はツアーガイドを付けずに日本を旅してみようと決意したのです。宿泊所や交通機関の予約、旅程の作成など、日本訪問時に必要とされる全ての段取りを、私は自分一人で整えました。

この旅行は私にとって、弟/妹と一緒にシンガポールを訪れて以来、2度目の海外旅行となります。シンガポールでの経験があったので、私は少しばかりの自信を持っていました。もちろん母の言葉もあり、日本でも旅行できるだろうという十分な確信があったのです。

ただ、この計画を同僚や友人に話してみると、難しいんじゃないのかなという否定的な反応を見せる人も中にはいました。一番の問題は言葉でした。私が話せる外国語は英語だけですが、日本では英語が積極的に使われている訳ではなく、中には英語でのコミュニケーションが苦手な人もいるからです。

そうしたやり取りから、母の教えにも疑問が湧いてきました。道路標識や地図に漢字が使われていたら、どうやって読めばいいのだろう。そして、言葉が通じないとすれば、どうやって尋ねればいいのでしょうか。この疑問を母にぶつけてみると、微笑みながら答えてくれました。真心や誠実さは世界共通の言語です。もちろん言葉というものは壁にもなりますが、相手を思いやる気持ちは誰もが持つものです。きっと皆さんがあなたのことを助けてくれるはずです、と。

母の第二の教えのおかげで、私も決意が固まりました。日本へ旅立ち、東京と京都をまわることにしたのです。東京滞在中の宿泊先には、千葉県の日本人家庭へのホームステイを選びました。ステイ先の家族の中では、末っ子のエイコだけが過去にシンガポールで働いたこともあり、十分な英語を話せました。

ホームステイ先までの行き先をポケットにしまうと、私は飛行機に乗り込みました。機内でまわりの乗客に、日本到着後に向かうべきバスターミナルの場所について尋ねてみたところ、私のステイ先の地域を知っているという年配の女性と出会いました。彼女は英語があまり話せなかったので、別に話しかけた乗客に通訳をしてもらう必要がありましたが。

飛行機から降りると、女性は私についてくるように言いました。荷物を受け取ると、その女性の子供が空港まで迎えに来ていました。女性は身振り手振りで私をホームステイ先まで送ってくれると申し出てくれました。迎えの方にエイコの携帯電話番号を伝えると、その場で連絡を取り、行き先を聞いてくれました。

ステイ先へ向かう道中では、言葉が通じないながらも、お互いに冗談を言い合い、笑いあっていました。女性とのこうしたやり取りを通じて、微笑み、真心、誠実さは世界共通の言葉であると気が付きました。2人はそのまま、私をステイ先の前まで送ってくれました。後で計算してみると、タクシーに乗った場合、100万ルピア(約1万円)以上を支払う必要があったようです。

ステイ先では、エイコのお母さんと過ごすことが多かったです。コミュニケーションは日本語のみでしたが、主婦でもあるお母さんは外国やその国の文化について話したり聞いたりするのが大好きな人でした。私がバリから来ましたと伝えると、お母さんは、休暇に家族でバリを旅行した時に その文化や自然に大感激したと教えてくれました。絵を描いたり、身振り手振りでのコミュニケーションも多かったのですが、それがステイ先で感じた家族の温かさに水を差すことはありませんでした。

日本の人々は本当に思いやりの気持ちを持っています。私が道を尋ねた時など、ある人は英語で十分に説明できないとなると、自分たちの行き先が違う方向であるにもかかわらず、私を目的地まで案内してくれました。

日本の皆さんの優しさや助け合いの文化のおかげで、私は旅行中に何の苦労も感じることなく、日本の文化、テクノロジー、自然、観光名所などを満喫することができました。もちろん言葉の問題で壁を感じたこともありません。みなさんはまだ日本語ができないからと言って、日本への旅行にためらいを感じていますか?本当にもったいないですよ^v^


【管理人コメント】
出典はバリ島の在デンパサール日本国総領事館が2012年から開催している「こんにちは日本」賞の入賞作品です。この賞はインドネシア人を対象とした日本に関するインドネシア語作文コンクールです(2013年は入賞作品以外にも200篇以上の作文が公開されています)。日本に興味を持ったきっかけ、日本語を勉強してみた感想、日本への旅行や実際に日本で暮らした思い出など、日本に関心を持つインドネシア人の「生の声」を知ることができます。

ただ、非常に残念なのは、公開されている作文に日本語訳が付いていない事です。最近では日本でもインドネシアが(主にビジネスの分野や「親日」というカテゴリーで)注目を集めることが多くなってきましたが、こうしたインドネシア人、特に日本に関心を持つインドネシア人の「生の声」がまとまった形で紹介されることはほとんどないように思います。日本人が考える「親日国インドネシア」という(時に一方的かつ無責任な)情報がインターネットやマスメディアに溢れる今、これらの作文をひとつの参考意見として日本へ紹介する価値は十分にあるはずです。様々な事情はあるかとは思いますが、ぜひ入賞作品だけでも日本語訳の掲載をお願いしたいです。

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※上記の作文コンクールの作品は、もちろんコンクール用の文章なので一部に凝った表現が見られる場合もありますが、基本的に非常に読みやすいインドネシア語で書かれています。インドネシア語を学習中の方にとっても勉強になると思いますので、一度目を通してみてはいかがでしょうか。オススメです!

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