2013年8月29日付「コンパス」紙社説の翻訳です。ここ半年で掲載されたコンパス紙社説(日本・東アジア関連)を訳していますので、関心がある方は下記の【関連記事】を参照して下さい(コンパス紙に関する若干の説明もあります)。
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社説:中日間の緊張
コンパス紙(2013年8月29日)
中日間の緊張は過去に敵対した歴史的な影響に領土紛争が加わり、静まる気配を見せない。
両国関係の悪化は、ロシアのサンクトペテルブルクで9月上旬に予定される主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の合間に両国首脳会談を開催するという日本の提案を中国が拒否した点からも、明らかに見て取れる。
習近平国家主席と安倍信三首相はサンクトペテルブルクで9月5、6日に開催されるG20サミットへの出席を予定している。日本による首脳会談の要請は、とりわけ日本が尖閣、中国が釣魚と呼ぶ諸島を巡る紛争が表面化して以降、悪化傾向にある中国との関係改善を示唆している。
世界第2位の経済大国である中国と第3位の日本。この中日間の緊張は両国間の協力に悪影響を与えてきた。これら2国の経済および貿易協力には領土紛争が立ちふさがる。両国間の緊張がアジア全域の安定に与える影響を懸念する声もすでに聞かれている。
紛争地域周辺での軍事展開によって、両国の開戦という懸念が生じている。中国と日本のどちらからも引く姿勢は見られない。この2国は世界的経済大国として、軍事分野における各々の能力を示したいとの印象も受ける。
現在の緊張状態は過去の歴史と切り離すことはできない。中国は1930年40年代の日本占領期における残虐行為にいまだトラウマを抱える。同様のトラウマは朝鮮や東南アジアも感じている。こうした関係におけるセンシティビティは、日本の指導者が第2次世界大戦で戦没した日本兵を祭る靖国神社を参拝した際にたびたび表面化してきた。
問題がさらにセンシティブなものとなる背景には、日本で編纂された学校歴史教科書がある。この教科書では日本軍が第2次世界大戦時にアジア諸国で行なった残虐行為を認めていない。また、中国との関係においては、領土紛争の存在から両国の緊張が悪化している。
両国の紛争が対話によって平和裏に解決されることが強く望まれる。この紛争が軍事力を持って解決された場合の代償はあまりにも大きすぎる。戦争は両国の重要性を損なうだけではなく、同時にアジア地域における安全と平和の秩序を危険にさらすからだ。
日本による対話の要請は紛争の平和的解決に向けた前向きな兆候だろう。中国は現在も対話をためらい 拒む姿勢を崩さないが、日本の要請はすでに両国の緊張緩和の一助となっている。
【管理人コメント】
訳文の「中日」という表現は原文ママ(China-Jepang)です。ただし、コンパス紙が全ての記事で「中日」という表現を使っている訳ではなく、「日中」という表現も頻繁に見られます。ここ半年の社説ではこの記事をのぞいて基本的に「日中」という表現が使われています。
※コンパス紙の「日中」「中日」の使い分けに関する詳細は不明です。不勉強で申し訳ないですが、この点に関して、どなたか詳しい方からのコメントをお待ちしています。
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また、これまでにコンパスの社説やコラムを翻訳した際に、同紙の「スタンス」に関するコメントが相当数寄せられていますが、新聞社の立場や主義・主張はひとつふたつの論説のみから判断できるものではありません。この点に関しては、これからある程度まとまった形でコンパス紙の社説を紹介する中で、皆さん自身に(できれば全ての社説訳を読んだ上で)判断して頂ければと思います。
コンパスの社説に関しては、インドネシアのネット掲示板紹介と合わせて、少しずつ訳出していければと考えていますので、気長にお付き合いいただければ幸いです(訳文に関して不明な点があれば、コメント欄を含めた下記の宛先までご連絡ください。早急に対処いたします)。
なお、コンパス以外にも日本に関する論説がインドネシアのメディアに掲載されれば、当然できる範囲で紹介するつもりです。情報提供は常時大歓迎ですので、情報をお持ちの方はよろしければ下記の宛先までご連絡ください。コメント欄でも構いませんが、返信を希望される方はツイッターまでお願いします。
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社説:中日間の緊張
コンパス紙(2013年8月29日)
中日間の緊張は過去に敵対した歴史的な影響に領土紛争が加わり、静まる気配を見せない。
両国関係の悪化は、ロシアのサンクトペテルブルクで9月上旬に予定される主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の合間に両国首脳会談を開催するという日本の提案を中国が拒否した点からも、明らかに見て取れる。
習近平国家主席と安倍信三首相はサンクトペテルブルクで9月5、6日に開催されるG20サミットへの出席を予定している。日本による首脳会談の要請は、とりわけ日本が尖閣、中国が釣魚と呼ぶ諸島を巡る紛争が表面化して以降、悪化傾向にある中国との関係改善を示唆している。
世界第2位の経済大国である中国と第3位の日本。この中日間の緊張は両国間の協力に悪影響を与えてきた。これら2国の経済および貿易協力には領土紛争が立ちふさがる。両国間の緊張がアジア全域の安定に与える影響を懸念する声もすでに聞かれている。
紛争地域周辺での軍事展開によって、両国の開戦という懸念が生じている。中国と日本のどちらからも引く姿勢は見られない。この2国は世界的経済大国として、軍事分野における各々の能力を示したいとの印象も受ける。
現在の緊張状態は過去の歴史と切り離すことはできない。中国は1930年40年代の日本占領期における残虐行為にいまだトラウマを抱える。同様のトラウマは朝鮮や東南アジアも感じている。こうした関係におけるセンシティビティは、日本の指導者が第2次世界大戦で戦没した日本兵を祭る靖国神社を参拝した際にたびたび表面化してきた。
問題がさらにセンシティブなものとなる背景には、日本で編纂された学校歴史教科書がある。この教科書では日本軍が第2次世界大戦時にアジア諸国で行なった残虐行為を認めていない。また、中国との関係においては、領土紛争の存在から両国の緊張が悪化している。
両国の紛争が対話によって平和裏に解決されることが強く望まれる。この紛争が軍事力を持って解決された場合の代償はあまりにも大きすぎる。戦争は両国の重要性を損なうだけではなく、同時にアジア地域における安全と平和の秩序を危険にさらすからだ。
日本による対話の要請は紛争の平和的解決に向けた前向きな兆候だろう。中国は現在も対話をためらい 拒む姿勢を崩さないが、日本の要請はすでに両国の緊張緩和の一助となっている。
Kompas, 29 Agustus 2013
Ketegangan China-Jepang
【管理人コメント】
訳文の「中日」という表現は原文ママ(China-Jepang)です。ただし、コンパス紙が全ての記事で「中日」という表現を使っている訳ではなく、「日中」という表現も頻繁に見られます。ここ半年の社説ではこの記事をのぞいて基本的に「日中」という表現が使われています。
※コンパス紙の「日中」「中日」の使い分けに関する詳細は不明です。不勉強で申し訳ないですが、この点に関して、どなたか詳しい方からのコメントをお待ちしています。
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このブログではこれから(主に日本・東アジアに関する)コンパス紙社説の翻訳を予定しています。これは同紙の意見が「正しい」と考えているからではなく、インドネシアを代表するメディアが日本(及び東アジア)に対してどのような論調であるかを「紹介する」ためのものです。「紹介」が主目的ではありますが、個々の記事に対する冷静な批判は当然あってしかるべきですので、インドネシアの新聞社による論説であるという点を踏まえた上で、皆さんからの忌憚のないコメントをお待ちしています。★「安倍晋三首相の靖国参拝論争」-コンパス紙社説(2013年12月28日)
★「中国による日本船舶の差し押さえ」-コンパス紙社説(2014年4月23日)
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また、これまでにコンパスの社説やコラムを翻訳した際に、同紙の「スタンス」に関するコメントが相当数寄せられていますが、新聞社の立場や主義・主張はひとつふたつの論説のみから判断できるものではありません。この点に関しては、これからある程度まとまった形でコンパス紙の社説を紹介する中で、皆さん自身に(できれば全ての社説訳を読んだ上で)判断して頂ければと思います。
コンパスの社説に関しては、インドネシアのネット掲示板紹介と合わせて、少しずつ訳出していければと考えていますので、気長にお付き合いいただければ幸いです(訳文に関して不明な点があれば、コメント欄を含めた下記の宛先までご連絡ください。早急に対処いたします)。
なお、コンパス以外にも日本に関する論説がインドネシアのメディアに掲載されれば、当然できる範囲で紹介するつもりです。情報提供は常時大歓迎ですので、情報をお持ちの方はよろしければ下記の宛先までご連絡ください。コメント欄でも構いませんが、返信を希望される方はツイッターまでお願いします。
インドネシア人の本音@honnesiaインドネシア人の本音 : インドネシア「コンパス」紙社説 日本語訳まとめ http://t.co/4xunhZ8jwk
2014/04/19 19:45:15
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コメント
コメント一覧 (19)
ってのはだいぶ独り歩きして定説になってるんだろうな
実際に日本の教科書を しかも複数あるのにそれを検証して記事にしている新聞社はどれほどあるのだろうか
少なくとも全否定しているどころか触れていない教科書もほとんどないと思うが
日本軍の残虐行為も検証しない 今の教科書がどうなってるかも検証しない
でも日本が悪いと決めつける それ以外の意見は修正主義者・極右・軍国主義
この風潮広めるのに日本人自身が多いに関わっているとは本当に嘆かわしい
(幼少よりインドネシアに住んでいたとはいえ)私はインドネシアの知識層と交流があった訳ではないのですが、コンパスの社説を読むと、インドネシアの知識層はなかなか冷静と云いますか、ある意味達観の域だなと思います。
インドネシアは第三世界としての強い立場を打ち出した国で、アジア・アフリカ会議を考えても親日とも、親中とも言い切れない国ではあります。
けれども、どの国も立場があり、そうした立場を俯瞰する懐の広さを感じさせる社説でした。
日本人は日本の教育を受け、日本の国益を考え、他国民も同様であるという大前提を認めた上での、冷静沈着な考えが広まる時代が来ることを望むばかりです。
理路整然と議論し相手の同意を勝ち取れなければ国際世論で孤立するのは日本の方だと思う。
最近はなんでもかんでも「けしからん」で怒りにまかせてレッテル貼ればいいと思ってる人が多いが、右左以前に陳腐。
アセアン諸国は必ずしも日本政府、政治家の取っている行動に対して賛意を示している国、国民ばかりではないという事実がわかるだけで収穫。
運営者様がんばってください
日本の新聞社もアレコレソレなりですので、まず心構えしておきますw
よろしくお願いします
歴史問題と関連があるかのように語っているが、
1985年までは靖国参拝は問題視されていなかった。
1985年に朝日新聞記者の加藤千洋が反靖国キャンペーンの記事を書き、
同年に社民党の田辺誠らが訪中先の首脳陣に反靖国を唆した。
結果、同年(1985年)の8月25日に中国の副首相が初めて公式批難した。
つまり、歴史問題から批難しているのではなく、
批難というポーズをとることで日本に外圧をかけているだけ。
日本はもっと
「中国との問題は過去の歴史問題や認識のせいではなく、中国が内政の問題解決を他国の領土侵犯をしてまで資源を強奪することに委ねていることであり、その野心を軍事攻撃に出てこない日本の弱さを突いて歴史問題が原因だと内容をすり替えていることにある。」
と強く主張すべきだね。
歴史問題が原因ならフィリピンやベトナムとも領土問題が起こり日本以上に緊張が高まっていることの説明がつかない
だから歴史問題のせいで緊張が高まってるっていうのは嘘っぱち
日中が武力衝突し全面戦争になれば、我々も否応なく悪影響を受けるからやめろ
明確で妥当なスタンスだと思います
どちらかの没落か、経済的な依存度で勝負がつくまでこのままでしょう
まだ日中共に踏み絵を迫れる状況に無いんですから、そうしたほうがいい
中国は戦争を起こす度胸はないし
日本はそもそも受け身だ
中国の行動は、動物が自分を大きく見せる威嚇のポーズをとっているに過ぎない
無視し続けて彼らが腐海に沈むのを待てばそれで十分だ
社説と言う選択に関心(感心)しきり。
他国がどう思っているのか、それをまず知らないことにははじまりません。
次もたのしみにしていますよ
こういう認識である時点で、国際世論において中国側の「問題設定」に負けてるってことが読み取れるね。
現在の緊張状態は、中国の経済成長を背景にした拡張主義が原因であって、過去の歴史は関係ないのが事実だけど。
フィリピンやベトナムを中国が脅かしているのと根は同じ。
ただ、中国が政治カード(対外、国内両方)として使いたいので、粘着になってしまってる事と
日本も償い的な運動の数々を、国民性からしてなんとなく、見えないというか世界的には
目立たない感じでやってきている事の両方で、ドイツとかと違って、バッサリ解決になってないんだよな
日中韓の緊張は日本の首相の靖国参拝が原因みたいな書き方もおかしい。
小泉内閣から第二次安倍内閣まで参拝せずとも充分関係は悪かったのにさ。
インドネシアも日本に占領された過去があるから手放しで支持はしてくれんよ。いい面もないわけじゃなかったことは理解してるが、ネットでいうほど日本贔屓ってわけじゃない。中国はもっと信用されてないけど、カネを儲けたいなら中国を無視するわけにはいかないし。
まあ、実際のところ、日本が独立を手伝ったなんてのはかなり恣意的な見方で、
インドネシアの人たちが当時の状況で最大限の努力をしたってだけの話だよな
ただ、日本がWW2を反省していないとか、領土問題でも、尖閣が中国領だったことは無いという事実を知らないで記事にされていることが残念です。
インドネシアでは、日本がアジア圏で果たした貢献は、WW2での惨禍を十分補えると捉えてもらえてたと思っていたので、がっかりです。
日本国内ではアジア解放など大日本帝国が掲げた大義を真に受けて周辺国に一方的な主張をするものも多少いるがそこで生活する人々にとって我々もよそ者。
この記事は客観的でありインドネシアの立場と合致する。
ただ現状ではマレーシアも我々と歩調を合わせるようになっておりインドネシアが地域のバランサー役を勝って出られる状況ではないため最新の論調が気になるところです。
13年度のインドネシア直接投資規模は日本がトップです。シンガポール経由も含めると圧倒的です。インフレと外資撤退を補って余りある日本の攻勢はインドシナ半島と園周辺を間違いなく魅了していると思う。
直ちに自国の権益と直結しないという楽観なのかな?
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