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2014年4月29日付けコンパス紙社説「韓国首相の辞任(PM Korsel Mengundurkan Diri)」の翻訳です。韓国旅客船セウォル号沈没事故の対応をめぐって、4月27日に辞任を表明した韓国首相について論じています。

また、これ以外にもここ半年で掲載された同紙社説(日本・東アジア関連)を訳していますので、関心がある方は下記の【関連記事】を参照して下さい(コンパス紙に関する若干の説明もあります)。

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社説:韓国首相の辞任
コンパス(2014年4月29日)

旅客船セウォル号沈没事故に関する政府対応の不手際から、韓国の鄭●原(●は火へんに共、チョン・ホンウォン)首相が辞意を表明した。

鄭氏は今回の旅客船事故で自らが指揮した政府対応の不手際に、首相として全ての責任を負うべきであると感じている。事故の犠牲者は188名とされているが、行方不明者114人の存在を考えれば、今後も増加すると見られる。4月16日に沈没したセウォル号は476人が乗船していたが、現在までに乗務員29人中22人を含めた、174人が救助されている。

同氏は政府を代表して、セウォル号沈没に関連して発生した事故後の初動対応や収拾の過程に至る全ての問題に対して謝罪した。

この鄭氏が示した辞任という責任の取り方はインドネシアでも関心を集めた。首相として潔く、本来は自らの部下が負うべき責任をとったからだ。鄭氏は自身の辞任を通じて、部下が恥を感じ、これまで以上の働きをしてくれることを望むとした。

こうした状況はインドネシアとは全く異なるものだ。この国では過ちを犯した者に対して辞職を求めること、ましてや自らの部下が犯した過ちの責任を取るよう求めることは非常に難しい。汚職事件への関与を理由に拘束された要人が一貫して辞職を拒否する事例などは枚挙にいとまがない。そればかりか、拘置所内で職務に任命される者や、任命を求める者もいる程だ。

韓国、日本、欧州などでは、責任を取れない、もしくは取ることに失敗したと感じた場合、辞任という決断を下すことが一般的だ。

だが、今回の鄭氏による辞任が必ずしも賛意を持って迎えられている訳ではない。韓国野党は、今回の辞任は卑怯な態度であり、責任の回避を狙ったものだと指摘する。

この韓国野党から出された批判はやや過剰なものだ。なぜなら、鄭氏の辞任はセウォル号問題が完全に決着した後に正式に行われるからだ。この点に関しては韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も言明している。

韓国通信社の聯合ニュースによれば、鄭氏の辞表は朴大統領のもとにあるが、それはスウォル号問題が完全に解決した後に初めて受理されるものであるという。したがって、鄭氏の辞任表明に対する「卑怯な態度」や「責任の回避」という批判には全く根拠がないと言える。

辞任という責任の取り方はインドネシアでも考慮されるべき、正しい行為である。

Kompas, Selasa, 29 April 2014
Tajuk Rencana: PM Korsel Mengundurkan Diri

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