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2013年9月7日付けコンパス紙社説「フィリピンと中国に求められる自制(Filipina-China Perlu Menahan Diri)」 の翻訳です。南シナ海のスカボロー礁での対立を念頭にフィリピンと中国の関係を論じています。

社説:フィリピンと中国に求められる自制
コンパス(2013年9月7日)

中国との関係が緊迫する中、フィリピン政府は9月5日木曜日、エーリンダ・バシリオ在中国フィリピン大使を北京から召還した。

しかし、フィリピン側は今回の大使召還は中国との懸案事項解決の手段を協議するためのものであり、緊張する両国関係のさらなる悪化は避けたいとしている。

フィリピン外務省のラウル・ヘルナンデス報道官は「今回の大使召還は話し合いを持つため」との談話を発表した。この声明は事態のさらなる悪化を望まないフィリピン側の意向を示したものであり、評価されるべきだろう。

今回の大使召還は、フィリピン国防省が南シナ海のスカボロー礁岩礁で75個のコンクリート塊を発見した事を受けて行われた。ヘルナンデス報道官によれば、発見された75個のコンクリート塊は同地帯の占拠を狙う中国が設置したものであるという。

大使召還は外交上、深刻な事態であると認識されており、強硬な抗議とともに行われることが一般的だ。フィリピン政府は今回の大使召還を通じて、スカボロー礁岩礁で発生した問題の深刻さを中国側に示した形だ。加えて、中国政府に対して外交ルートを通じた抗議も検討している。

フィリピンと中国は両国ともにスカボロー礁での領有権を主張している。スカボロー礁はフィリピンのルソン島から220キロ、中国最大の島である海南島から650キロに位置する環礁だ。フィリピンは、200海里(360キロ)の排他的経済水域の規定に照らせば、スカボロー礁は自国領土に含まれるとするが、中国は同地域は自国固有の領土であると主張している。当然、スカボロー礁における領有権問題を解決することは容易ではない。ましてや、台湾もこの環礁の領有権を主張している。

スカボロー礁は南シナ海に数多く存在する紛争化された岩礁のひとつである。南シナ海における紛争にはフィリピンと中国だけではなく、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、台湾も関わっている。

中国は今後近いうちに、「南シナ海行動規範(COC)」策定を議論するアセアン各国との会合でホスト国を務める予定となっている。フィリピンと中国の関係が緊張したままでは、フィリピン側が同会合を欠席するという事態も起こり得る。フィリピンが欠席すれば、会合の意義は大きく損なわれるだろう。だからこそ、私たちはフィリピンと中国がともに自制を働かせることで、状況がこれ以上悪化しない事を望んでいる。南シナ海での軍事衝突は誰からも望まれぬものである。

Kompas, 7 September 2013
Tajuk Rencana: Filipina-China Perlu Menahan Diri


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インドネシア「コンパス」紙社説 日本語訳まとめ 
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