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2014年6月2日付けコンパス紙社説「アメリカ、中国の行動を批判(AS Kritik Perilaku Tiongkok)」の翻訳です。アメリカのチャック・ヘーゲル国防長官がアジア安全保障会議で述べた中国に対する批判を念頭に、中国の海洋進出について論じています。

社説:アメリカ、中国の行動を批判
コンパス(2014年6月2日)

アメリカは5月31日土曜日、中国の南シナ海での行動は地域の安定を揺るがすものであると批判した。

アメリカは前日にも、中国が設定した東シナ海の防空識別圏は認められないと強調し、中国側に撤回を強く求めていた。

中国とアセアン四か国(ブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム)間の領土問題はすでに長きにわたって続いてきた。しかし、昨今では、中国船が他国と領有権主張が重なり合う南シナ海海上を巡回し、あたかも自国の領土であるかのように振る舞っている。

南シナ海・南沙諸島のセカンド・トーマス礁では、今年4月上旬、複数の中国警備艇が数度にわたって、フィリピン民間船を妨害した。フィリピン船は同諸島で活動を行なうフィリピン海軍部隊に物資を運搬していた。

衝突はこれで終わりではない。5月上旬にも、中国の海上警備艇が南シナ海・西沙諸島近海で、同地域の領有権を争うベトナムの海上警備艇を追跡している。また、ベトナムで発生した反中国抗議デモに関連して、中国船がベトナム船に船体を衝突させる場面も見られた。

フィリピンやベトナムは中国の攻撃的な行為に抗議を表明しているが、中国政府が意に介する様子はない。こうした現状を念頭に置けば、私たちは、アメリカのチャック・ヘーゲル国防長官が5月31日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で中国の行動を批判した事を歓迎したい。

同会議では、中国人民解放軍の王冠中副総参謀長も演説し、アメリカの批判には根拠がなく、威嚇や脅しの言葉がちりばめられていると表明した。しかし、超大国であるアメリカの批判は中国側にも聞き入れられるのではないか。

中国はおそらく、アメリカ海軍第7艦隊が東南アジアと東アジアを含むインド洋のディエゴ・ガルシア島から太平洋のグアム島を管轄している点を考慮し、アメリカの批判に耳を傾けることだろう。アメリカの関心は航行の自由の確保にある。東シナ海で中国が設定した防空識別圏をアメリカが認めていないのもこのためだ。ましてや、東シナ海の一部海域では現在も、日中両国が領有権を主張している。

アメリカが強い姿勢を示すことで、中国が領有権問題を抱える他の国々に対して2度と攻撃的な行動をとらないことを期待したい。

Kompas, Senin, 2 Juni 2014
Tajuk Rencana: AS Kritik perilaku Tiongkok


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