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中国に対する抗議デモを行う在日ベトナム(300人超)=5月11日午後、東京都港区

2014年6月27日付けコンパス紙社説「理解に苦しむ中国政府の対応(Sulit untuk Memahami Sikap Beijing)」の翻訳です。中国が公開した南シナ海を自国領土とする新たな地図を念頭に、ベトナムに対する中国政府の不可解な対応について論じています。

中国が新たな地図作成、南シナ海の領有権を強調
2014年06月26日(木)10時35分

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6月25日、中国が南シナ海を含む新たな公式の地図を公表したと、国営メディアが報じた。写真は公表された地図。Reuters TVの映像から(2014年 ロイター)

[北京 25日 ロイター] - 中国は、南シナ海を含む新たな公式の地図を公表した。国営メディアが25日報じた。この地図は従来のものに比べ、周辺国と領有権を争っている海域や島々への権益を強調するものになっている。

政府が出版した従来の地図には、南シナ海の部分を切り取った小さな地図が全体の隅に掲載されていただけだった。今回の地図はより縦長になっており、中国が主張する境界線も描かれている

新たな地図について、同国外務省の華春瑩報道官は、「地図の目的は、中国国民に役立ててもらうことだ。過剰に連想する必要はないと思う」とコメント。

その上で、同報道官は「南シナ海問題に対する中国の姿勢は一貫しており、とても明確だ」と述べた。南シナ海の9割の海域で権益を主張する中国は、フィリピンやベトナムなど東南アジア諸国と対立している。

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2014/06/128957_1.php


社説:理解に苦しむ中国政府の対応
コンパス(2014年6月27日)

6月25日水曜日、中国政府は主に南シナ海における自国領土を拡大した新たな地図を公表した。

中国が公開した新たな地図に対して、フィリピンは強い反発を示した。南シナ海ではフィリピンを含むASEAN四か国と中国が互いに領有権を主張している。しかし、フィリピンはこれまでに、他の3か国(ブルネイ、マレーシア、ベトナム)とは異なり、一貫して南シナ海における中国の攻撃的行動に対する抗議を声高に訴えてきた。

フィリピン外務省は今回公開された新たな地図には全く根拠がなく、中国の拡張主義であると指摘。今回の地図公表は明らかに国際法及び1982年に採択された国連海洋法条約(UNCLOS)に反するものだとしている。

フィリピンの強硬な反発は当然だろう。なぜなら、新たな地図では南シナ海が明らかに中国領土に含まれており、中国政府はこれまで主張してきた「九段線」に新たなラインをひとつ加えているからだ。

ましてや、中国の沿岸警備艇はこれまでに南シナ海上で度重なる神経戦を繰り返してきた。時には同海域で領有権を争うフィリピンの民間船の行く手を阻むこともあった。

ベトナムはフィリピンとは異なり、南シナ海で領有権を主張する中国の沿岸警備艇に対してより強硬な手段を講じてきた。ベトナム沿岸警備艇は中国船に船体を衝突させているが、これはベトナム政府の発表によると、ベトナム船に衝突してきた中国船に対する報復措置であるという。

ベトナムは当然ながら容易に恫喝に屈する国ではない。中国は言うまでもなく、フランスやアメリカに対しても立ち向かってきた。このベトナムの強硬な対応に対して、中国政府はなすすべもなく、両国間の懸案を国連に文書で訴え出た。だが、国連に訴え出た中国政府の対応は理解に苦しむ。なぜなら、中国政府はこれまで常に、南シナ海の領土紛争を二国間協議によって解決するよう強要してきたからだ。

加えて、さらに理解し難いのは、中国はなぜ今この時期に南シナ海を含む新たな地図を公表したのか、という点だ。私たちの理解では、南シナ海を明確に自国領土としなかった従来の地図でさえ、フィリピンとベトナムとの間に緊張を生み出してきたはずだ。ましてや、中国政府は同海域を明確に自国領土に加えた上で、地域の平和と安定を損なったとの理由からベトナムの対応を国連に訴え出てもいる。中国政府首脳らが考える論理とは実に興味深いものである。

Kompas, Jumat, 27 Juni 2014
Tajuk Rencana: Sulit untuk Memahami Sikap Beijing

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