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2013年12月6日付けコンパス紙社説「同盟国を静めるバイデン米副大統領(Biden Tenangkan Sekutu)」の翻訳です。 バイデン副大統領の日韓訪問を念頭に、日本の対東アジア外交およびアメリカ側の思惑に関して論じています。

社説:同盟国を静めるバイデン米副大統領
コンパス(2013年12月6日)

アメリカのバイデン副大統領の日韓訪問は額面通りに受け取れば、同盟国を落ち着かせるためのものとして読み解くことができる。

アメリカがこの措置を必要とした背景には、防空識別圏(ADIZ)を設定することで東シナ海の現状を変更しようとする中国の動きがある。この中国の新たな政策によって、東アジア地域では緊張が高まっている。

中国が発表した新たな政策によって、同国が「管理」する空域を民間機が通過した際の安全性に関しても懸念が高まっている。日本はこの政策を、日中両国が領有権を主張する尖閣諸島(日本)、もしくは釣魚島(中国)の空域を守るためのものと見ており、当然受け入れを拒否した。

他方で、韓国も中国による防空識別圏の「拡大」に対して苦慮している。拡大した防空圏が韓国領域に迫っているためだ。中国(※訳注:原文ママ)と韓国は当然、この中国の新たな政策に対して強い不快感を示している。

こうした状況に置いて、バイデン副大統領の外遊は非常に重要な意味を持つ。アメリカは道義的に、現在 中国と「対峙」する自らの同盟国の不安を取り除く義務がある。また、今回の中国の政策はこれまで東アジア地域で軍事作戦を実施してきたアメリカ軍用機の「障害」ともなり得る。

バイデン副大統領が東京で行なった声明から、アメリカは今後も日本との同盟関係を緊密に維持していくとの意向が明らかになった。言い換えれば、アメリカは同盟国の利益に対して「不都合」が生じた場合、座視することはない。しかし、バイデン副大統領は同時に、日本に対して中国との対話による問題解決を促してもいる。

日本は中国だけではなく、同じアメリカの同盟国である韓国とも問題を抱えている。アメリカ政府は当然、日本と韓国が対立するという事態を望んではいない。そのため、バイデン副大統領は日韓両国に対しても、両国間の懸案を解決するよう促している。同盟国である日本と韓国の不調和は東アジア地域のみならず、昨今ますます攻撃的な姿勢を見せる中国に対処する上でもアメリカの障害となり得るためだ。

つまり、今回のバイデン副大統領の外遊には、中国の軍事政策に「苦慮」する同盟国を落ち着かせる以上の目的があったと言える。しかし、時を同じくして、アメリカは日本に対して、環太平洋戦略的経済連携協定、すなわち世界の国内総生産の40パーセントを占める12カ国が参加する地域貿易協定の交渉を終えるよう求めてもいる。これは日米間で、日本の農産物やアメリカの自動車関税などの問題が山積しているためだ。

言い換えれば、アメリカは不利益を被るつもりはなく、当然 日本が支払うべき対価も存在している。

Kompas, Jumat, 6 Desember 2013
Tajuk Rencana: Biden Tenangkan Sekutu

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