COOL-JAPAN (1)

インドネシアの国営アンタラ通信による2014年11月28日付け配信記事「日本の文化プロモーションに学べ(Belajar promosi budaya dari Jepang)」の翻訳です。 日本のポピュラーカルチャーの普及を念頭に、インドネシアにおける「国民的文化」の創出を提案しています。

日本の文化プロモーションに学べ
2014年11月28日金曜日11時12分(WIB)

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昨年12月21日に行われたコンサート「Performing All Out! 友だちになってくれてありがとう」に出演するJKT48

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「ジェー、ケー、ティー、フォーティ・エイト!」 衣装を身に着けたJKT48メンバーがひとりずつステージに整列すると、大半が男性で占められた観客たちからの掛け声が一斉に響き渡った。彼らが持つ色とりどりのペンライトが揺れる様はまるで光の海のようだった。

このアイドルグループは現在 桜の国でブームとなっている日本のアイドルグループAKB48の姉妹グループだ。インドネシアでは日本のポピュラーカルチャーがますます存在感を増しているが、JKT48はそうした数ある事例のほんの一部に過ぎない。

例えばコミックを見てみよう。インドネシアの書店の漫画売り場に目をやれば、インドネシア語に翻訳された日本の漫画家のコミックが売り場を占領している。名探偵コナン、ナルト、ワンピースなどはもはやインドネシアの漫画ファンにとって馴染み深い作品と言える。

テレビに関してはどうだろうか。ドラえもんなどのアニメシリーズはインドネシアでも長期にわたって放映されている。日本製のドラマは韓国ドラマがインドネシアで人気を博す以前から、すでに国営放送で放映されてきた。「おしん」「東京ラブストーリー」「ロング・バケーション」「ビーチ・ボーイズ」「1リットルの涙」などが代表的な作品として挙げられる。

日本の音楽もまたインドネシアの音楽ファンの心に特別な位置を占めている。ラルクと呼ばれるロックバンドのラルク・アン・シエルは、2012年5月にグループ結成20周年を記念したコンサートツアーの一環としてインドネシアを訪問した。Tetsuya(ベース)、Hyde(ボーカル)、Yukihiro(ドラム)、Ken(ギター)のインドネシア初公演を一目見ようと1万人の観客がジャカルタのスナヤン広場に押し寄せた。

料理に関しても同様だ。日本食レストランはすでに至る所に開店し、様々な有名ショッピングモールでも見つけることができる。そこでは寿司、たこ焼き、ラーメン、うどんといった各種メニューが提供されている。

桜の国のキャラクターも、アメリカなどの他国のキャラクターともにインドネシアで人気を競い合う。例えば、ハローキティは、学校の文房具や女児向けの髪留めや洋服などの数多くの品物に描かれている。

日本の谷崎泰明駐インドネシア大使はインドネシアで自国の文化に関心が集まるのは誇らしいことであり、日本の文化がさらにインドネシアで知られるようになってほしいと話す。「例えば、テレビを通じてです。私たちは数多くの魅力的なテレビコンテンツを持っています。そうした番組がインドネシアの皆さんにも視聴して頂けるように、現地のテレビ局でも放映されるといいのですが」と谷崎は語った。


文化外交

インドネシア大学日本文化研究科講師のモサデック・バフリ(Mossadeq Bahri)によれば、日本の文化プロモーションはすでに長きにわたって行われてきた。例えば、日本はロンドンでの文化展覧会など1800年代から太鼓や三味線の紹介に努めてきたという。

日本政府もまた、ソフトパワー面を含めた文化の普及の成功に重要な役割を担ってきた。「日本政府も海外への事業ユニット展開を支援してきましたが、それは長い目で見れば日本のためでもありのです」とモサデックは語った。

日本政府は経済産業省(METI)および、2002年から実施されている「クール・ジャパン」政策を通じて自国の文化やクリエイティブ産業の普及を強く推進してきた。日本政府による支援の一例が、2012年から毎年開催されている「アニメ・フェスティバル・アジア・インドネシア」などの場を通じて、クリエイティブ産業企業のインドネシアでのプロモーションを促進するといったものだ。

こうした文化紹介を目的とする取り組みは、日の出ずる国が持つソフトパワーという財産に支えられている。「日本はハードパワーを備えた強国です。だからこそ、彼らはソフトパワーを持つのです」と日本外交を講じるモサデックは語った。

ハードパワーにおいては、ある国は武器などを用いた暴力的な行為によって自らの要求を進めていく。逆に、ソフトパワーによるアプローチでは、文化などの恐怖を感じさせない方法を通じて物事をスムーズに進めることができるという。

ソフトパワーはある国の他国での国家的利益を確保するという役割を持つとモサデックは語る。日本とインドネシアの事例で言えば、その理由は経済的要因にあるという。「日本はインドネシアに巨額の投資を行なっています」とモサデックは話した。

ポピュラーカルチャーを含めた日本文化がインドネシアで広く受け入れられるようになると、インドネシアを有望な市場とする取り組みもさらに順調にいくとの期待が生まれた。「インドネシアは日本にとって、非常に多くの人口を抱えた市場なのです」とモサデックは語り、その一例として自動車分野に言及した。

インドネシアは確かに日本の企業家にとって魅力的な市場となっている。例えば、角川コンテンツアカデミー代表取締役社長兼CEOの古賀鉄也は2015年にジャカルタ・アニメーション学校の開校に意欲を示す。

なぜインドネシアが日本のビジネスの対象国となっているのか。その理由のひとつが、インドネシアのとりわけ大都市部で続く人口の増加だ。古賀 が示したデータによると、インドネシアは2011年には日本の海外有望投資先として第5位につけていた。「しかし、今年の日経新聞の調査によると、インドネシアは4位に後退した中国を押しのけ、1位に選ばれています」と古賀は2014年10月末、デポックのインドネシア大学日本研究センターで開催されたクリエイティブ産業およびコンテンツ産業に関するセミナーで語った。


市場としてだけではなく

モサデックはインドネシア社会は国民的文化を持たないがゆえに海外の文化を簡単に受け入れるとした上で、地域文化は国民的文化とは異なるものであると強調した。

モサデックによれば、国民的文化とは自国を代表し得ると国民に理解されてるものであり、例えば、インドネシア全国でみられる食べ物や、全てのインドネシア人が理解できる言語を指す。「どれを国民的文化として取り上げるべきかは、皆で話し合う必要があります」とモサデックは話した。

仮にインドネシアが国民的文化というアイデンティティを持つことがなければ、この国が将来的にも単に他国の市場となるだけだろうとの懸念が生じる。「現状に変化がなければ、他国の利益をもたらすメイドとなるだけでしょう」とモサデックは語った。

Antara, Jumat, 28 November 2014